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放送教育ネットワーク

   前回、私は基礎学力を6つに分け、定義しました。その中で、放送を使って身につけられる力は何かと考えた場合、「問う力」を身につけさせることだと考えました。以下は、平成7年度から8年度にかけて実践した事例です。
  1 はじめに
   子どもたちと環境について学習していく中で、水、空気、食べ物が何か変だと知識ではわかってきましたが、まだ足りないと私は考えていました。物の豊かさと便利さを追い求める私たちの暮らしは、大気汚染や森林破壊を招き、大きな問題となっていることに気づかず、今の生活をあたりまえのこととして生活しています。大人とて何ら変わることはありません。環境教育で問われているのは、私たちの暮らしの中に自然と生き物が密接にかかわるシステムを発見させ、環境を守る視点から、自分自身の暮らしを見つめ直させ「本当に今のままでいいの?」と問いかけ、疑わせることです。
  2 研究内容
   私は2年間にわたり『いのち輝け地球』の番組を子どもたちと視聴しました。最初の1年目は、自分のクラスだけで、子どもたちと視聴を続けました。1年間の視聴で事実を読みとるだけの視聴から、「なぜ?」そうなるのと、本質にせまる視聴に変わってきました。これは、私が考えていた「問う力」が身についてきたことでした。また、何気なく過ごしてきた自分の生活にも目を向けるようになってきました。そして2年目。たまたま同じクラスを担任することになりましたので、他のクラスにも呼びかけ同じように視聴することにしました。しかし、自分のクラスは2年目の取り組みなので、子どもたちだけではなく、家庭で親子同時視聴をすることで、より効果が上がるのではないかと考え、「親子同時視聴にみる学校放送番組の効果的利用のあり方」というテーマにしました。
私はこの年、この取り組みを学級経営の1つの柱として位置づけました。そして、2つの仮説を立てて取り組むことにしました。
 
<仮説1> 親子同時視聴をすることで親は学校での子どもの学習内容が理解でき、 子どもは親が同じ番組を視聴していることで、学校での視聴態度に好影響を与えることが できる。
<仮説2> 子どもの考え、親の感想から、一層子どもの理解につながり、テレビをよい意味での身近な存在とし、やがて番組を選ぶ力を身につけ、「本当にこんなことをしていていいの?」と「問う力」を身につけることができる。
   また、自分なりの研究を進めるにあたり、その手だてとして以下の3つを行いました。
(1) 協力のお願い
   まず、同時視聴とは? の疑問にお答えする意味で、4月の授業参観に番組を親子、教師で同時視聴し、懇談会で担任が目指す事柄にご理解とご協力をお願いした。
(2) 番組の選択
   番組は2週間に1本放送されている。しかし、すべてを同時視聴するには時間的にも無理なので、月に1回番組を指定し、年間の放送日、同時視聴日も明らかにし計画を立てた。
(3) 親の感想・意見
   視聴ノートに「親の感想・意見」欄を設け、感想を書いてもらい、後日担任がワープロで打ち直し、授業の中で紹介していった。
当初の計画では11回分同時視聴できるはずだったが、実際には10回で最終回を迎えてしまった。その中で第8回目に視聴した「農薬を使わないミカン園」の視聴ノートの保護者の声を掲載します(12月4日放送、12月22日子どもに配布)。
 
天敵を使った農業がどんどん広まるとよいと思う。スーパーで、見た目が悪い野菜、果物はほとんど見ない。最近、安全性を求めている人が多いはずなのにと思う。毎日、何らかの農産物を食べる。農薬に対して害虫のほうが強く、抵抗力もつけてしまうとは驚いた。野菜に幼虫をみつけるとギョッとするが、それがあたりまえなんだと、虫食い葉や色が悪くても農薬よりはまし。私たち消費者が応援していかないと、安全な食物が入らなくなると思った。農薬は恐ろしいとあらためて思った。
 
私たちは野菜を見た目で選んでしまいがちですが、今日視聴してわかったこれらのことを頭に入れて、選ぶ目を養いたいと思います。でも、まったく農薬を使わないということはとても難しい問題がたくさんあると思います。
   最後に1年間のまとめとして、担任から保護者の方へ感謝を込めたメッセージを送りました。

今回は第10回目の同時視聴でした。昨年4月20日にお話ししたときは、3月までの11回を視聴できるかな? とも思ったのですが、現実には今回で最終回になってしまいました。クラスの子どもたちとは2年間にわたり、約40本の番組を視聴してきました。今、思い返してみるとどの番組も懐かしく思い出されます。5年生のときは、まだまだ視聴の基本的なことや番組内容を情報として受け止める程度でした。しかし、6年生になって、「その番組が自分たちに訴えているメッセージ(人間としてあなたはどう考えますか)」を考えるようになってきました。また、今回もっともうれしかったことは、家庭と学校で子どもを育てるという共通認識のもとに、同じ番組を子どもと保護者が視聴して、共通の話題を話し合っていくことこそ、私が目指していた生きる力を培う放送利用のひとつのあり方だと思っています。

私は20年以上「放送番組を継続視聴させることで、はたして子どもの視聴能力、ここでは基礎学力の中の「問う力」は育成できるか? 子どもは変わるか?」という自分なりの課題を持ちながら毎年研究をしてきました。よい番組を継続して視聴し、みんなで考え、話し合う経験の繰り返しで、子どもたちは心の中から洗われるように、本来、子どもの持っていたやさしさや思いやり、感謝の気持が育つのだと思います。
視聴してきた『いのち輝け地球』は、小学校高学年を対象にした環境教育番組として制作されていましたが、子どもたちはすでに環境教育を大きく越えて、人間教育の面でも何かを感じてくれたように私には思えました。
放送教育と基礎学力というテーマで考えてきましたが、この2年間の取り組みで「問う力」の基礎学力は確実に身につき、育ってきたといえます。放送の特性を考え、3か月、6か月、1年と継続視聴することで、ゆっくりではあるが学力が身についてきたということです。

この内容は、平成7年度の放送教育関東ブロック大会(春日部大会)と平成8年度放送教育全国大会で発表した内容をもとにしました。
 
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