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放送教育ネットワーク

平成23年度 62回放送教育研究会全国大会(東京大会)

大会報告

去る、8月3日(水)に第62回放送教育研究会全国大会がおこなわれました。その様子を簡単にご紹介します。

ごあいさつ

全国放送教育研究会連盟 事務局長  操木  豊

今年度は、首都圏での大幅な電力不足等への配慮から、8月3日一日間の開催とさせていただきました『第62回放送教育研究大会全国大会(東京大会)』でしたが、お陰様で、延べ600名を越す多くの方々のご参加をいただき、成功裏に終了することができました。ご指導・ご参加いただきました皆様に厚くお礼申し上げます。

以下web上で大会の様子をご報告させていただきます。

尚、大会終了後に、参加された皆様からのご意見を参考に、来年度の全国大会に向けての準備もさせていただきます。

来年度の全国大会は、『第63回放送教育研究会全国大会・第16回視聴覚教育総合全国大会 合同大会』として、平成24年8月2日(木)、3日(金)の両日、国立オリンピック記念青少年センターで開催を予定し準備をしております。

皆様のご予定に入れてくださるようご案内申し上げます。

大会テーマ

ネットワーク社会におけるメディアとヒューマンコミュニケーション
~人間力をはぐくみ 未来を拓く 放送学習~

期 日

平成23年8月3日(水)

会 場

国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)

日 程

開会行事 ※写真をクリックすると拡大します。

平成23年度全放連基調提案

番組別研究・研修会(午前)

1 幼稚園・保育所向け番組「しぜんとあそぼ」

2 小学校・道徳番組「道徳ドキュメント」

「道徳ドキュメント」を授業でどのように活用しているか、名古屋市立大須小学校の森昭則先生が発表された。番組制作者の福井徹チーフプロデューサーのコメントや、指導講師の大阪教育大学教授・木原俊行先生のまとめ、会場の参加者からのQ&Aなど、活発な討議がなされた。会場もほぼ満席で、盛会であった。

3 小学校・社会科番組「どきどきこどもふどき」

「社会科番組」では、3年から6年まで幅広く対象とした『どきどきこどもふどき』の活用研究のあり方について制作者の方の番組解説も交えて議論を深めた。

山口県下松市立公集小学校の浅村芳枝先生が家庭科で行った実践報告を受けたワークショップでは、社会、道徳、国語で、あるいはキャリア教育的にと多様な提案がみられた。それらの実践には教師の番組活用力・授業を構成する力が問われると、東北学院大学准教授・稲垣忠先生から講評いただいた。

4 小学校・理科番組「ふしぎがいっぱい(5年)」

提案者お二人の活用番組が、5年生の「ふしぎがいっぱい」と共通で、単元も同じ「動物のたんじょう」だったので、接点も見出しながら進んだ。さいたま市立下落合小学校・小畑康彦先生の提案では、授業の意図に合わせて、番組やクリップの役割を明確にされている点や視聴後の子どもたちの人間味あふれる感想交流が印象的だった。また川崎市立下布田小学校・片岡義順先生の提案では、教師が、番組を視聴した子どもたちの思いをくみ取って小さな生き物の観察に行き、顕微鏡で生き物を観察する活動につなげた。その観察活動の中でも友だち同士の学び合いがあったことが語られました。

このあと番組を活用した授業または単元プランを作ってグループごとに発表をし、武蔵大学教授・中橋雄先生に本分科会の学びをまとめていただいた。

5 中学校、高等学校・校内放送研究Ⅰ

昨年度の放送コンテストの入賞作品を中心に視聴し、グループごとに意見交換をするという方法で分科会を行った。意見交換は、小・中・高・特の各校種の先生が入り交じったグループで行い、各グループで話し合われたことを発表した。そして、NHKの番組制作者から制作者側の視点でお話をいただいた。様々な観点での評価を共有しあった分科会となった。

○今回視聴した作品
H22年度 NHK杯全国中学校放送コンテスト
テレビ番組部門 最優秀賞 広島市立伴中学校「ごちそうさまでした。」
ラジオ番組部門 最優秀賞 日本大学三島中学校「大切なキモチ」
H22年度 NHK杯全国高校放送コンテスト
テレビドキュメント部門 優勝 北海道旭川東高等学校「究極の登校」
テレビドキュメント部門 準優勝  長野県松本筑摩高等学校「スマイルメーカー」
H23年度 NHK杯全国高校放送コンテスト 東京大会出場作品
ラジオドキュメント部門 東京都立上水高等学校「魔法の言葉」

6 一般・OB 「坂の上の雲」に因んで 「月給四十円」~司馬さんが愛した人間・正岡子規~

テーマ別研究交流会(午後)

1 人間力の育成

「できたできたできた」の番組を使った実践報告を横浜市立茅ヶ崎小学校の平野千恵先生が、「ざわざわ森のがんこちゃん」を継続視聴した実践報告を、札幌市立月寒東小学校の高橋譲先生が、「ストレッチマンハイパー」の撮影を通しての授業での活用事例を、東京都立高島特別支援学校の中村裕先生が、それぞれ発表した。

最後に、指導講師である大阪教育大学教授の木原俊行先生からは、「人間力の構造、それを育成する意義」「人間力の育成に対する、学校放送番組活用のさらなる可能性」について指導、講評をいただいた。会場は満員状態で、大盛況であった。

2 豊かな心をはぐくむ 「しぜんとあそぼ」「つくってあそぼ」「えいごであそぼ」

3 ICTを活用した学習 「10min.ボックス 古文・漢文」「知ットク地図帳」電子黒板等を活用して

定員80名をこえ、外で立ち見が出るくらい大盛況であった。西之表市立種子島中学校の松尾しのぶ先生は「10min.ボックス古典・漢文」の「論語」を使った授業実践を発表。普段から番組を使って工夫しながら授業をされているとのことだった。日の出町立大久野中学校の市倉茂雄先生は、電子黒板を使った授業例および校内研修での取り組みをエネルギッシュに発表された。川崎市立柿生小学校の佐藤拓先生は、NHKデジタル教材「知っトク地図帳」を使った社会科の授業実践を発表。番組をどう使って授業を進めるか、その工夫したところを色々紹介された。

最後に、講師の武蔵大学教授・中橋雄先生が、3人の発表をわかりやすくまとめて講評をしてくださった。

4 中学校、高等学校 校内放送研究Ⅱ

NHK日本語センターの山下俊文アナウンサーが、中学生と高校生にとても具体的なアナウンス指導をしてくださった。挨拶などの短い文から始まり、一昨年のNHK杯全国高校生放送コンテストの課題文なども使用しての指導で、「アナウンス」と「朗読」の違いにも注目しながら指導方法を学んだ。山下アナウンサーの、時に笑いも交えた分かりやすい指導によって、生徒役の子どもたちの話し方が段々変わっていく様子を見ることができた2時間であった。

大会のまとめ

これからの放送教育の可能性と課題ということで、本大会に共同研究者として携わっていただいている4名の講師からご意見をいただいた。

まず園田学園女子大学教授の堀田博史先生より幼児番組の活用について放送視聴した後の展開が視聴覚教材とICT機器の活用が融合されたものとなって繰り広げられていたこと。映像の可逆的操作とその操作が園児の学習に効果を発揮していたこと。そうしたことが継続されることにより学びの深化や遊びの広がりに結びついたという成果が報告された。そして放送教育の効果は保育者が温かく見守っている時により発揮しているということもあり、子どもの能動的な学びを促す効果も報告されていた。一方で放送時間帯が変わってしまったことによる「生で視聴」という伝統的な放送教育のスタイルを見直さなくてはならないことも指摘された。

大阪教育大学教授の木原俊行先生より道徳番組の実践を受けて番組から感じ取った価値を子どもたち同士で深め合うことは、道徳番組の特徴であり道徳教育と情報教育の接点を追究していることが確認された。また、部分視聴が伝統的な放送教育の展開を再考していたこと、カリキュラムとの関連性を意識し年間の位置づけを校内で工夫している点が評価されていた。人間力の育成部会からは3つの実践からどの実践者も子どもの実態を丁寧に把握していること、研究というスタンスでありながらも「楽しく」を意識されてあったこと、そしてこれらを意図的に継続・発展させるような実践であったことが評価されていた。豊かな学び直しとしての人間力の育成に与するという示唆をされていた。

武蔵大学教授の中橋雄先生からは理科番組についての報告をいただいた。理科番組では活用型・探究型をクリップが習得型を重視する形でつくられるようになり、新学習指導要領を意識したものになってきている。さらに、10分番組が登場したことで、教師の取り上げ方によって多様な授業展開が可能となっている。ICT機器の普及に伴いますます活用の幅が広がってきている。実践提案では教師の意図がはっきりしており、単に映像を見せるだけでなく子どもが疑問をもち予想し、実験や観察に向かうことができていた。さらに追究したいことや授業で確認したいことについてはクリップを活用するという流れがあった。映像が対話の場面を誘導している、子どもたちが自ら動くことを可能にさせている。21世紀型学力として展望するにあたりまだまだ授業づくりの蓄積や開発が必要である。そのためにも、放送番組をどのように授業に活かすのか教材性や授業方略という視点も欠かせないという考えを述べられた。

最後に、一人ひとりから放送教育のこれからというテーマで展望を述べられ、東北学院大学准教授の稲垣忠先生がまとめられた。共通点としては、継承と新たな模索・時代への対応として番組も変化が求められ、授業づくりも変わっていく必要性があることだという。まず、番組は見せれば分かるだけではなく、ストーリー性やドキュメンタリー性といった放送の強みを残しつつも、トピックとして教科書にはない切り口で活用が図られ、さらに子どもたちが活用していく学習スタイルに対応していくコンテンツが求められるであろう。21世紀型学力といわれるような、子どもたちの豊かな心や確かな学力を身に着けさせるために一斉・個別・協働学習に番組や映像がどのように活用され授業が展開できるか教材としての意味づけ、活用方法をより鮮明にした提案の積み重ねが今後も必要であるという認識がなされた。

そして、クリップだけでなく放送ならではの読み解く面白さや感動をもたらすような番組作りに今後の期待を込められディスカッションをまとめられた。

午後の分科会で講評を終えてからのごく短い時間ではあったが、四氏がそれぞれの研究分野からの鋭い指摘とともに、新学習指導要領の実施とICT機器の拡充、そして地上波デジタル放送の開始という時代変化の過渡期の今、将来を見据えた提案性の高い重要な指摘がなされた。

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