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放送教育ネットワーク

ネットワーク通信


2015年5月25日(月)

子どもたちの輝く瞳を求めて

鈴木 衆(東京都目黒区立東根小学校教諭)

「せんせい 今日は何みるの?」
「『できた できた できた』だよ。」
「わーい‼」

こんなやりとりから1年生の学習は始まります。授業の挨拶が終わると、子どもたちは、なにも言わなくても自分の椅子をもってテレビの前に集まり、番組が始まるのを目を輝かせて待っています(写真)。番組が始まると「ペースくん」の質問に答えたり、「はなまるロック」を歌ったりしながら番組を楽しんでいます。こうした生き生きと学ぶ子どもの姿を見ると、長年、放送教育に取り組んできたことのうれしさを感じます。

写真・1年生の授業の様子

これまで多くの学校では、教科書と黒板、さらに教師の準備した教材を中心に学習が展開されてきました。こうした学習は主に言語を使ってコミュニケーションが行われ、子どもたちに共通の問題意識をもたせ、普遍的な回答を求めていきます。そして、学習を通して、社会や自然に関わるさまざまな概念を「知識」として身につけさせようとするものです。そうした学習活動は、一人一人の子どもの問題意識を出発点にした学習への取り組みや個性的な問題追究よりも、記憶力を中心とした学習が大事にされることになります。

一方、放送教育は、番組を視聴した子どもたちが番組のさまざまな場面に心を動かし、一人一人が自分なりのイメージを形成し、多様に広がった興味・関心をもとに、個々の課題を自分の力で解決したいと考えることを大切にします。放送番組は、映像と音声で子どもたちに直接働きかけ一人一人の興味・関心を広げていきます。こうした時、教師は、放送番組を学習に生かしながら、一人一人の子どもの感性的で個性的な学習を援助していくという役割を担っていくことになります。放送教育は番組を学習に生かす教育方法です。したがって、視聴前、視聴後の学びの在り方が大切になります。番組を視聴している時には輝いていた子どもたちの瞳が、視聴後の教師の一言で曇ってしまってはいけないのです。そのためには、思考のイメージが広がる、ゆったりとした環境で視聴させることはもちろんですが、視聴前に番組の視聴ポイントを示したり、視聴後に知識のみを問うたり、視聴中にメモをとらせたりすることも子どもの主体的な学びを阻害するものになると思っています。私が放送教育を始めた時代には、教師も子どもたちと一緒に番組と出会うことが当然でした。子どもたちと共に番組を視聴し、番組内容や番組の主題を捉えながら、一方で、視聴中の子どもたちのつぶやき、反応を見て取りました。そして、番組内容と子どもたちの興味・関心、番組に対する反応内容を整理し、番組の終了とともに、学習のねらいに向かって、子どもたちの思いを生かした学習をスタートさせました。

インターネット上や録画によって事前に番組内容を検討することが容易にできる時代とはなりましたが、教師が自らの意図だけで放送番組を教材として活用するだけでは、子どもたちに寄り添った学習を構成することは十分できないと思います。いつの時代になっても、放送番組からの映像・音声と子どもたちの視聴反応という二つの情報を活用して、短時間で視聴後の学習内容を構成することができる能力が求められているのです。その際、事前の準備では、子どもの反応を予想して複線型の学習過程をイメージすることや学習過程にフレシキブルな部分をもたせることが大切だと思います。番組を文脈に沿って読みとり、ねらいと関連づけて理解すると共に、学習者である子どもが番組をどのように受け止め、どのような内容や方向性をもって学びに向かおうとするのかというイメージをもつということです。これまで放送教育は、放送のもつ優れた特性を教育の中で最大限生かす学習過程の在り方を実践の中で明らかにしてきました。それは、「生・丸ごと・継続」という象徴的な言葉で受け継がれてきました。

放送のもつ「直接教授性」を生かす「生利用」、学習者を主体とした学習の土台となり、論理構成や問題解決の道筋を「モデル」として学びとっていくことのできる「丸ごと」、番組に親しみ、番組のねらいや主題を的確に理解する力が伸び、映像理解能力や情報活用能力の伸長も期待できる「継続利用」です。今日、番組の多様化、番組関連WEBサイトの充実など、放送を取り巻く環境は大きな変化を見せています。そうした中でこそ「生・丸ごと・継続」という考え方を「放送教育の方法論」としてとらえるのではなく、50余年という長い時間をかけて実証してきた「放送教育の理念」としてこれからも大切にしていかなくてはならないと考えます。このように、学習者を主体にした教育を大切にしてきた放送教育であるからこそ、「生きる力」を一人一人に培うことができると考えます。

放送番組を大いに活用し、瞳輝く子どもたちを育てましょう。

この記事は、日本視聴覚教育協会発行の月刊「視聴覚教育」5月号にも掲載されています。
日本視聴覚教育協会ホームページ(放送教育ネットワークのページを離れます)

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